ウイグル人と漢民族の民族間結婚の増加
中国政府は、少数民族のウイグルを迫害し、強制収容や強制労働などをおこなっていると伝えられてきた。さらに、文化同化のためにウイグル人と多数派の漢民族との結婚が政策的に進められていることが明らかになった。
英紙「デイリー・テレグラフ」によると、2022年11月半ば、米ワシントンにあるウイグル族の人権団体「ウイグル人権プロジェクト」は、ウイグル人と漢民族の間の婚姻に関する報告書を発表した。
同報告書によると、さまざまな手段で民族間の結婚は促進され、特に2018年以降、その件数は増加しているという。公営のプロパガンダメディアで伝えられるのは、主にウイグル人女性と漢民族男性との結婚だが、ウイグル人男性と漢民族女性の結婚もある。
2018年以降、中国の公営メディアでは、異民族間の結婚に対しては金銭的なインセンティブが与えられると強調されてきた。たとえば、アクス県カラサ村では、ウイグル人と漢民族のカップル2組に4万元(約80万円)が提供されたという。
強制結婚させられるウイグル人
この報告書は、公式の政策文書、ソーシャルメディアの投稿、海外に亡命したウイグル人へのインタビューなどから作成された。
海外に逃れた複数のウイグル人女性は、ウイグル人の家族は、結婚に関心を示す漢人男性を拒否できる立場にはないと証言している。拒否すれば本人や家族が罰を受け、収容所に入れられたりすると想定されるためだ。
ある女性は、「収容所に送られるかもしれないという恐怖から、18歳の娘と漢民族との結婚に同意せざるを得なかった」隣人がいると語っている。
ウイグル文化の解体
報告書の共著者であるヌジグム・セティワルディは、米メディア「ラジオ・フリー・アジア」に、この民族間の結婚の推進は、ウイグル人を漢民族社会に強制的に同化させようとする試みだと述べる。
報告書でも引用される、2019年に出版された漢族の男性党員向けの非公式な結婚ガイド『どうやってウイグル女性のハートをつかむか』には、その姿勢が読み取れる。ウイグル人女性と結婚したい漢族男性に向け、愛する女性は「祖国を愛し、党を愛し、社会主義の新疆に比類ない情熱を持っていなければならない」と記されているのだ。漢民族男性に、妻となったウイグル女性をそう教育させようとしているのだろう。
米ワシントンを拠点とする共産主義犠牲者記念財団の中国研究シニアフェローのエイドリアン・ゼンズは、この結婚はウイグル文化を解体しようとする共産党の政策の一環だと話す。ゼンズは、2017年にウイグル人集団収容所のネットワークを記録した最初の外部専門家だ。
習近平国家主席は「少数民族の人口を最適化し、新疆ウイグル自治区南部におけるウイグル人優位な状況を崩そうとする」人口政策を採っており、民族間の結婚はそれに沿ったものだと、彼は言う。
習近平は2014年の新疆仕事フォーラムで「新時代」を宣言し、民族間の「接触、交流、交わり」を強化する政策を訴えた。それ以降、民族間の結婚はメディアでさかんに伝えられるようになり、件数も増えている。